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著者  吉村長光 ( 元日本電子株式会社 )
「Historical Evolution Achieving Ultrahigh Vacuum in JEOL Electron Microscopes」
2014年 Springer社 刊

新刊書籍紹介

真空技術をテーマとした本は数多く出版されている。その多くが、真空技術の入門書や真空技術の基礎を主体とした内容である。この様な中に特定の機器に用いられる真空技術を、その製品の初期の頃の問題点を掘り起こし、改良を重ねて現在世界有数の機器に辿りつくまでの足跡をまとめあげた書籍は珍しい。著者は元日本電子株式会社(JEOL)で電子顕微鏡の真空排気系設計の尽力してきた吉村長光氏である。この様な本を著した吉村長光氏に敬意を表して同著の紹介をする。

本書は全文英語で書かれており、以下各章の内容を紹介する。願わくば邦文での刊行も検討して頂きたいものである。
第1章 Introduction of the Electron Microscope
ここでは各種電子顕微鏡の原理などについて解説している。

第2章 History of JEOL Electron Microscopes
この章では世界及びJEOLの各種電子顕微鏡の歴史について解説している。

第3章 Accidents and Information, Instructing Us to Improve the Vacuum Systems of JEMs
著者が経験した電子顕微鏡に用いる真空排気系の各種トラブルを分析している。

第4章 Developments of the Evacuation Systems for JEMs
電子顕微鏡の排気系で油回転ポンプや拡散ポンプの問題点を明らかにしている。

第5章 Development of JEOL SIPs
電子顕微鏡の排気系に適したイオンポンプを開発するため、多くの著名な論文を参考にして、実用化に至った。JEMの電子銃室の排気系はこのイオンポンプが用いられている。

第6章 Ultrahigh Vacuum Electron Microscopes
超高真空型電子顕微鏡の開発のため、電界効果型電子ソースのメカニズムや排気系の最適化を図るための考察が述べられている。

吉村長光氏は2008年に今回の著書と同じくSpringer社から「Vacuum Technology Practice for Scientific Instruments」という英文の著書を上梓している。これも電子顕微鏡の排気系を設計する中、解決しなければならなかったガス放出や荷電粒子と表面の問題を解決するための理論的考察を行ったものである。更に2003年には「マイクロ・ナノ電子ビーム装置における真空技術」と題した著書をエヌ・ティー・エス社から出版している。いずれも氏のライフワークであった電子顕微鏡の真空排気系の開発に関連したものである。参考までに紹介した。これ等は電子顕微鏡に係わる人だけに係わらず、真空排気系に係わる多くの問題に直面している方には大変に参考になる書であると思う。

なお本書はインターネット検索サイトに書名を入力する事でSpringer、Amazon、楽天等書店や通販サイトに接続され各サイトから購入できます。Kindle版(電子書籍)での購入も可能です。

推薦者:木ノ切恭治(真空テクノサポート代表 元日本真空工業会専務理事)